Legal Column
リーガル・コラム

相続法

相続法改正特集 その3

前回に続き、相続法改正の重要ポイントを解説します。今回は、配偶者保護のための方策の一つ、配偶者居住権です。
高齢化の進展により、被相続人の死亡後も、その配偶者が長く生活を続けることが少なくありません。被相続人の死亡前から、配偶者が被相続人が所有する建物に住んでいたのであれば、引き続き住み慣れた建物に住みたいと希望することは多いはずです。ところが、不動産の価値は高いので、遺産分割で、配偶者が建物の所有権そのものを取得すると、預貯金など生活費の財源になる財産が十分に取得できなくなる可能性があります。
そこで、遺産分割の際に、配偶者のために居住建物の所有権ではなく、使用権限のみを取得することを認め、低廉な価額で居住権を確保できるようにすること(その分、他の遺産の分割を受けやすくなる)等を目的に新たに創設されたのが配偶者居住権です。配偶者居住権の成立要件は、①配偶者が相続開始の時に被相続人の建物に居住していたこと、②その建物について配偶者に配偶者居住権を取得させる旨の遺産分割、遺贈または死因贈与がされたことです。
配偶者居住権が成立すると、配偶者は、原則として終身の間、その建物に無償で居住することができます。
ところで、今回の改正では、配偶者短期居住権という制度も、新たに設けられました。これは、配偶者が被相続人の生前その所有建物に無償で居住していた場合、配偶者にその建物の占有権原がなくても、短期間(遺産分割終了時まで、消滅申入から6ヶ月まで等)だけ、無償で居住することを認める制度です。
配偶者居住権と配偶者短期居住権は、いずれも令和2年4月1日から施行されます。
両制度どもに、今までになかった制度ですので、ご不明な点があれば、当事務所までお問い合わせください。