Legal Column
リーガル・コラム

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ハーグ条約

昨年5月にハーグ条約を締結することについて国会で承認され、6月には同条約締結に伴う国内実施法が成立しました。条約の発効と実施法がいつ施行されるかについては未だ決定されていませんが(平成25年11月、原稿作成時点)、この条約について、簡単にご紹介したいと思います。

国際結婚が増えるにしたがい、結婚生活が破綻した際、一方の親がもう一方の親の同意を得ることなく、子を自分の母国に連れ出し、もう片方の親に面会させないといった「子の連れ去り」が問題視されるようになりました。国境を越えた「子の連れ去り」は、子にとってそれまでの生活基盤が突然急変するほか、一方の親や親族・友人と交流が断絶され、また異なる言語文化環境へも適応しなくてはならなくなるなど、子に有害な影響を与える可能性があります。

そこで、監護権の侵害を伴う国境を越えた「子の連れ去り」があった場合に、まずは原則として子を元の居住国へ返還すること(その上で、子の元の居住国の裁判所で監護権に関する紛争を解決する)、及びそのための手続を定めたのがハーグ条約及びその国内実施法です。

ハーグ条約は、1980年に作成され90カ国が締結していましたが、日本はG8諸国中唯一未締結の状態でした。

そのため、これまで日本から外国に子を連れされられた日本人の親は、自力で不和になった相手と子を探し出して外国の裁判所に子の返還を訴えなければなりませんでした。また、外国で離婚し生活している日本人が子と共に一時帰国する場合に、ハーグ条約未締結を理由に、外国の裁判所等において、一時帰国が許可されないという問題も発生していました。日本がハーグ条約を締結することによって、これらの弊害が解消されることになります。

ハーグ条約の適用があるのは、①子が16歳に達していないこと、②子が条約締約国に常居所を有していたこと、③不法な連れ去り・留置の時点で常居所地国と連れ去られた先の国の双方において条約が発効していること、④子が条約締約国内に所在していることを全て満たす場合です。

ところで、日本がハーグ条約を締結するということは、外国に居住していた日本人の親が相手方の了解無しに日本に子を連れてきた

場合にも、まずは原則として子を元の居住国へ返還しなければならないことになります。

この際、相手方によるDVや子の虐待があった場合にも子を元の居住国に返還しなければならないのでしょうか。

この点、ハーグ条約締結後も、①連れ去りから1年以上経過し、子が新たな環境に適応している場合、②申請者が事前の同意又は事後の黙認をしていた場合、③返還により子が心身に害悪を受け、又は他の耐え難い状況に置かれることとなる重大な危険がある場合、④子が返還されることを拒み、かつその子が意見を考慮するのに十分な年齢、成熟度に達している場合には、子を返還しなくて良いと裁判所が判断する場合があります。

ハーグ条約では、もう一つ、国境を越えて親子が面会交流できる機会を得られるよう締約国が支援することを定めています。

ハーグ条約については、未だ締結されておらず、これから施行されるものであるため、具体的な運用については、ハッキリしないところもありますが、もし、関連した問題がありましたら、当事務所までお問い合わせください。