Legal Column
リーガル・コラム

相続法

相続法改正特集 その4

今回は,「配偶者に対する居住用不動産の遺贈・贈与に関する持戻し免除の意思表示の推定」についてご説明します。これは,前回紹介した配偶者居住権と同様,配偶者保護のために新設されたものです。

改正前より,相続人の中に,被相続人から特別受益(扶養の範囲を超える特別な贈与等)を受けた者がいる場合は,相続人間の公平を図るために,特別受益の額を相続財産に加算し(持戻し),その総額から各自の相続分を算出し,特別受益者については,その相続分から特別受益分を差し引いた額が相続分とされていました。そして,例外的に,被相続人の持戻し免除の意思表示があった場合は,被相続人の意思を尊重して,持戻しをしなくてもよいとされていました。

今回の改正では,一定の要件の下で,持戻し免除の意思表示があったものと推定し,その場合は,原則として持戻しを不要とする規定が加わりました。持戻し免除の意思表示があったものと推定されるための要件は,①婚姻期間が20年以上の夫婦間の遺贈・贈与であること,②遺贈・贈与の対象が居住用の建物,敷地,配偶者居住権であることです。

「推定」ですので,これを争う相続人が,持戻し免除の意思表示がなかったことを証明して覆すこともできます。例えば,被相続人が,持戻し免除を希望しない旨遺言等に残していた場合などは,推定が覆ることになるでしょう。

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