Legal Column
リーガル・コラム

民法

家族法制の改正

令和6年5月17日、改正家族法が成立し、令和6年5月24日に公布されました。

今回の改正は、父母の離婚に伴う子の養育への深刻な影響や子の養育の在り方の多様化等の社会情勢に鑑み、子の利益を確保するために、父母の離婚後の子の養育に関する民法等の規定を見直すものです。

具体的には、①子の養育に対する親の責務等に関する規定の新設、②親権・③養育費・④親子交流・⑤養子縁組・⑥財産分与に関する改正等がありました。いずれも実務に影響のある重要な改正ですが、今回は⑤を除き、概括的なご紹介をしたいと思います。

まず、新民法817条の12第1項は、父母が子の心身の健全な発達を図るための、その子の人格を尊重するとともに、その子の年齢及び発達の程度を配慮してその子を養育しなければならないことを明確化しました。同時に、父母の養育の義務の程度が、生活保持義務(子が自己と同程度の水準の生活を保持することができるよう扶養する義務)であることを明確化しました。そして、同条2項において、父母は、婚姻関係の有無にかかわらず、子に関する権利の行使又は義務の履行に関し、その子の利益のため、互いに人格を尊重し協力しなければならないことを明確化しました。

次に、親権に関する改正については、新民法819条が離婚後の子の親権者を、父母の共同親権とすることを可能にしたことが注目されます。これは子の利益を確保するためには、父母双方が離婚後も適切な形で子の養育に関わり、その責任を果たすことが望ましいとの考えに基づくものです。その上で、親権者を定める際に、裁判所が考慮すべき要素を明確化するとともに、父母の一方を親権者と定めなければならない場合を明確にしています。これらの詳細については別の機会に譲るとして、裁判所が父母の双方を親権者とすることができる場合を父母の合意がある場合に限定していない点は注意が必要です。その他、親権者の定めについて協議が整っていない場合でも、親権者の指定を求める家事審判・調停が申し立てられていれば、協議離婚が可能とされたこと(新民法765条)、親権の共同行使が必要な父母の婚姻中であっても親権の単独行使が許容される範囲を明確化したこと(新民法824条の2)、父母の離婚後に子の監護の分掌(分担)の定めをすることができること(新民法766条1項)や、子の監護者の定めがされた場合の権利義務を明確化する(新民法824条の3)などの改正がなされました。

養育費についても、重要な改正がされています。父母の協議や家庭裁判所での取り決めがなされる前であっても、離婚時から一定額の養育費を請求することができるという「法定養育費」の制度が新設されました(新民法766条の3)。また、養育費などの子の監護の費用に先取特権を認め(新民法306条)、債務名義がなくても、強制執行をすることを可能にするなどの改正がなされました。

親子交流については、父母の別居後や離婚後も親子交流が安全・安心・適切に実現されるように、父母の婚姻中の親子交流に関する明文の規定を設け(新民法817条の13)、親子交流の試行的実施に関する規定を整備しました(新家事事件手続法152条の3)。父母以外の親族と子との交流の規定も新たに設けられました(新民法766条の2)。

財産分与については、家庭裁判所が考慮すべき要素を明示するとともに、行使期間を2年から5年に伸長するという改正がなされました(新民法768条)。

以上のとおり、概括的に見ても、重要な改正がなされていることに気づかれると思います。当事務所としてもしっかりとフォローしていきたいと思います。