Legal Column
リーガル・コラム

その他

老後の安心のためのホームロイヤー契約

最近,ご本人,あるいは,ご本人がお亡くなりになった後に残されることになるご家族(主に配偶者)の老後の不安に関するご相談をお受けすることも増えてきました。

今回は,判断能力の低下や,詐欺,悪徳商法といった高齢者を取り巻く危険に不安を感じているご高齢の方に弁護士が寄り添い,ときには医療機関や福祉機関などとも連携しながら,法的支援等を行ういわゆる「ホームロイヤー」という業務についてご紹介します。

判断能力が一定程度低下し,援助が必要になった場合に備えた「成年後見制度」については,ご存知の方も多いかと思いますが,ホームロイヤー業務については,あまり知られていないのではないかと思います。医療における「かかりつけ医」に似た,「かかりつけの法律家」といった感じでイメージいただければよいかと思います。

ホームロイヤー業務は,特別に法で規定されたものではありませんので,定型的なものではありませんが,主な業務としては,①法律相談等の生活上の様々な相談,②見守り契約などが挙げられます。

ホームロイヤー業務においては,まず,生活支援,財産管理等に関するご本人の老後設計や,遺言,事業承継,死後事務等の死亡後におけるご本人のご希望などの情報を記した,いわゆる「ライフプランノート」を作成します。ライフプランノートは,ホームロイヤー契約締結後,早期の段階で作成しますが,家族構成等,ご本人を取り巻く状況が変化したり,ご本人のご意向が変わったりした場合は,内容を修正することになります。

前述の,①法律相談等の生活上の様々な相談をお受けした際は,ライフプランノートなどを参考に,ご本人の将来設計などに関するご意向を確認した上で,それに沿ったアドバイスを差し上げることになります。お受けする相談内容は,一般的な法律相談の他,財産管理,生活設計,遺言,相続,事業承継,死後事務等,多岐にわたることが想定されます。

また,②見守り契約は,定期的な電話や訪問等による面談により,生活状況,健康状態の変化や何か問題を抱えていないかといったことについて確認を行うものです。これによって,何らかの問題を抱えているにもかかわらず,ご本人がその重大性に十分お気づきでない場合などにも法的支援を行うことができますし,高齢者を狙った詐欺,悪徳商法等による被害を未然に防いだり,健康状態に問題がありそうな場合は,主治医に連絡し,早期の診療につなげたり,といった対応をすることができます。また,成年後見申立の適切な時期を見極めるためにも,見守り契約による定期的な連絡は役立ちます。

ホームロイヤー契約も契約である以上,判断能力に問題が生じた後の契約が無効になる場合もありますので,現在はまだお元気で,直ぐにサポートが必要ではないという場合,実際の業務はもっと先に開始することとして,ホームロイヤー契約の締結だけ先に行うといったことも考えられます。

上記は一般的な説明ですが,前述のように,ホームロイヤー契約は法定の制度ではありませんので,各自の生活設計やご家族との関係などを踏まえ,いろいろなアレンジが考えられるかと思います。ご関心をお持ちの方は,ご相談下さい。