パワハラ防止法
令和元年5月、労働施策総合推進法が改正されました。この改正法第八章により新たに規定されることになったのが、いわゆる「パワハラ防止法」です。この改正法は、令和2年6月1日に施行されました。
この法律では、職場における「パワーハラスメント」とは、「職場において行われる①優越的な関係を背景にした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるものであり、①~③までの要素を全て満たすもの」をいうとされています。
具体的に、どのような行為がパワハラにあたるかどうかは、厚労省が出した「パワハラ指針」(令和2年1月15日厚生労働省告示第5号)に6つの代表的な類型が例示的に示されています。
- 身体的な攻撃(暴行・傷害)
- 精神的な攻撃(脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言)
- 人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し、無視)
- 過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制・仕事の妨害)
- 過小な要求(業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)
- 個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)
指針では、それぞれの類型ごとに、パワハラに該当する例と該当しない例が示されていますので、具体的な事例で判断に迷う場合には参考にしてください。
さて、今回の改正法・パワハラ防止指針により、事業主には以下のパワハラ防止措置を講ずることが義務付けられました(中小事業主は、令和4年4月1日までは努力義務)。
- 事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発
①職場におけるパワハラの内容・パワハラを行ってはならない旨の方針を明確化し、労働者に周知・啓発すること
②行為者について、厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等の文書に規定し、労働者に周知・啓発すること
- 相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
③相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知すること
④相談窓口担当者が、相談内容や状況に応じ、適切に対応できるようにすること
- 職場におけるパワハラに係る事後の迅速かつ適切な対応
⑤事実関係を迅速かつ正確に確認すること
⑥速やかに被害者に対する配慮のための措置を行うこと
⑦事実関係の確認後、行為者に対する措置を適正に行うこと
⑧再発防止に向けた措置を講ずること
- そのほか併せて講ずべき措置
⑨相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、その旨労働者に周知すること
⑩相談したこと等を理由として、解雇その他不利益取り扱いをされない旨を定め、労働者に周知すること
措置義務⑩にもありますが、今回の改正法により、事業主は、労働者がパワハラについて相談を行ったことや、雇用管理上の措置に協力して事実を述べたことを理由とする解雇その他の不利益取り扱いをすることが、法律上禁止されました。
今回の改正法により、パワハラについての対策を定める法律が初めて作られましたが、セクハラやマタハラについても、男女雇用機会均等法、育児・介護休業法が同時に改正されることにより、防止対策が強化されました。
これを機会に、各種ハラスメント対策を再確認することが必要であると思います。